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マウンド上の投手は、福岡コンドルズの若手投手・河原。
高い潜在能力を有するだけに、今後の大化けが期待される左腕だ。
右対左と、剛紀には有利な初対決となった。
河原は捕手からのサインに頷き、投球動作を始めた。
球場の応援も、より熱が入り、剛紀もグッと集中力を高める。
流れるような動作のラスト、河原の指先からボールが放たれた。
ボールは、軌道を変えながら捕手のミットに向かっていく。
「(真ん中低め、内寄り……高速スライダー!)」
降り出した剛紀のバットが、ボールを捉えた。
カァァン!
痛快な打球音を残して、放たれたボールは痛烈なライナーで二遊間を抜いた。
「おおー!」
というどよめきと歓声が沸き起こり、一塁ベースに到達した剛紀に拍手が送られた。
全て、自分に向けられたものだと理解すると、自然と鳥肌が立った。
「これがプロの舞台か」
その場に立ち、初めて味わう快感を、感動を剛紀は噛み締めた。
そして、先ほどの感触の余韻に浸りながら、ヘルメットを取り、スタンドのファンにお辞儀をした。
剛紀のオープン戦初打席は、見事なヒットで飾られた。
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