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小島の目が、剛紀を捉える。
さっきまでの目配せとは違う、勝負師の目で剛紀を睨む。
その視線を感じ取り、剛紀は一瞬体を強ばらせた。
ピリピリとマウンドから伝わってくる闘気に、剛紀は飲み込まれずに気を張った。
小島の左足が上がり、そのまま流れるように体重移動し、前に大きく踏み出される。
鍛えられた下半身が地面を掴み、それと連動して、腰、肩、肘…と連動する。
胸が正面を向き、置いていかれた肘から先が、鞭のようにしなりながら後を追う。
そして、ビュンッとしなりを利かせた右腕の指先からボールが放たれた。
ビシュッ!
ボールは空気を切り裂き、音を立て、糸を引くようにミットへ一直線に向かっていった。
「(来た、ストレート!)」
当然、この時の剛紀は初球にヤマを張り、ストレートを待っていた。
そのストレートが、ど真ん中に向かって伸びてくる。
剛紀は、バットをストレートの線上まで持ってきた。
「(もらった!)」
そう確信しバットを振り抜いた。
<カァン!>
打球は高く舞い上がった。
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