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「樫琶です!監督、失礼します!」
監督室に着いた剛紀は、ドアをノックし、声を掛けた。
「おう、入れ」
返事が返ってきて、剛紀はドアを開いた。
そこには、椅子にふんぞり返って薄くなった頭を拭う若辺がいた。
「こっち来て座れ」
「はい!」
若辺の見た目が怖いこともあり、剛紀は若干の緊張をしていた。
そして、机を挟んで若辺の正面に置かれたパイプ椅子に、剛紀が腰掛ける。
ギシッと、重さに耐える椅子の音が静かな部屋に響く。
席に着くと、間髪入れずに若辺は話し始めた。
「今日は残念だったな。まぁ、プロの世界なら今日が普通だったりするんだけどな」
「はぁ……」
「どうだ、プロの投手は。高校生とは三つも四つも格上だろう」
投手出身の若辺は、意地悪そうに笑いながら、そう言った。
「はい……」
こんな雑談より、早く用件を聞きたかった剛紀は、我慢しきれず若辺に尋ねた。
「あの……話というのは?」
すると、若辺は表情を堅く戻し、咳払いをして剛紀に向き直った。
「……俺は投手出身だから、野手の育成法なんてまだわからん」
急に語り出す若辺の言葉に、剛紀は聞き入った。
「だから、野手についてはコーチ陣に任せてるわけだ」
「それで、昨日の首脳陣会議で、実はな……」
「樫琶、お前は二軍でじっくり育てようって話になったんだ」
「………え?」
あまりの衝撃に剛紀は、放心状態に陥った。
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