激励

3/5
前へ
/90ページ
次へ
その日も、報道陣に囲まれての練習を終えた剛紀。 寮でグッタリと体を横にしていたときだった。 <ピリリリ!ピリリリ!> 夜中の10時過ぎだったが、剛紀の携帯が鳴った。 携帯を手に取り画面を見ると、着信の相手は剛紀の母だった。 「(お袋……)」 実家には既に開幕一軍の報告をしていた剛紀は、何の用なのか疑問を抱きながら、電話に出た。 「もしもし、お袋?」 するとすぐに、電話を通して剛紀母の元気な声が聞こえる。 「もしもし、剛紀?」 いや、この時は元気だけではなく怒気も伝わってきたのだった。 剛紀母は続ける。 「あんた、最近よくテレビで見るけど、自惚れてんじゃないの?」 藪から棒にそう言われるも、剛紀には何も思い当たる節がなかった。 癒やしを求めていた剛紀は、苛立ち反論するも、次の母の言葉に沈黙させられる。 「今日のスポーツニュース見たわよ!あんた、リポーターさんの質問に適当に返したり、無愛想に振る舞って、失礼でしょ!」 違うのだ、心身とも疲労がピークに達していたため、それどころではなかったのだ。 というのは、言い訳に過ぎないことを悟った剛紀は、口を閉じた。 それから、しばらく母の説教を聞いていた。 すると、あるとき思い出したように、剛紀母はこう言った。 「そうだ、浩くんは二軍に落ちちゃったんでしょ?」 浩くんとは、剛紀母が小島(浩介)のことを呼ぶときの略称である。 「この前、小島さんにバッタリ会ってね。浩くんの話になったのよ」 今まで母に叱られ、気を落としていた剛紀は、小島の話になった途端、母の話に集中した。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加