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試合は、初回から先発の涌口が完璧な立ち上がりを見せ、オリックスの一、二、三番を三者凡退に斬った。
攻守交代し、一回裏の西武の攻撃は、一番、二番と楽天先発の中田の前に沈黙したが、三番の中山がライト線に流し打ち、見事二塁に到達。
いきなりのチャンスに、打席には昨年の本塁打・打点王の岡村。
盛り上がる西武ファンだったが、この場面は相手の中田が勝り、岡村は一塁へのファールフライに終わった。
このとき、剛紀はネクストで落ち着いて戦況を見守っていた。
「(次の回、攻撃は俺から始まる……俺が流れを作らなければ)」
相手の先発、中田は昨年に投手タイトル最高の勲章・沢村賞を獲得した、闘士溢れる右上手投げ。
150㎞をコンスタントに計測する直球に、武器は鋭く曲がるスライダー。
そしてそれらをコーナーギリギリに決めることができる制球力。
タイプは小島とよく似ているが、その実力は超一流。
特に、ここぞという時の集中力、力強さ、その闘士は尋常ではない。
簡単に打てる相手ではないことは明確だった。
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