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｢スイング！｣
嶋谷は主審にスイングをアピールした。
そして主審から一塁塁審へ確認が取られる。
｢(振ってない……頼む！)｣
剛紀は必死の形相で塁審を睨む。
少し間が空いて、ようやく一塁塁審が判定を下す。
｢あっ……！｣
塁審の両手は、左右に大きく伸ばされていた。
｢ボールカウント、2-2！｣
主審がコールし、球場のウルフズファンからは安堵の声が湧いた。
｢お前、よく止めたなァ｣
嶋谷が剛紀にそう囁く。
扇の要は、色々な手を使って打者を打たせない工夫をする。
嶋谷は、言葉で剛紀を翻弄しにかかった。
｢(ストレートはリスクが高いし、スライダーは見えてるし、SFFも反応出来る……。今コイツにつけ込む隙があるなら、新人ということだけだからな、囁き戦術は得意じゃないが効果的だろ)｣
しかし剛紀に見えているのは、中田の姿だけだった。
｢偶然です｣
淡々として、口調は冷静、目線は直ぐに中田に向けられる。
あまりにも肝っ玉の座っている剛紀に多少の苛立ちを感じながら、嶋谷はサインを送った。
｢(小細工は通用しない…か。ならねじ伏せる以外、手はないぜ！)｣
外角低め、ストレートのサイン。
中田が頷いた。
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