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「彼を日本一の打者に、とのことですが、保障は出来ません」
そう前置きしてから、姿勢を少し前傾させ、話を始めた。
「確かに、彼はセンスも強い精神も兼ね備えている、素晴らしい新人です。しかし、プロとして必要なものは持っていない」
真剣に語る鷲峰に恐縮し、徳利は静かに着席した。
「それが、君にも分からない。ということだね?」
鷲峰の言わんとすることを先読みした相賀は、食い入るように鷲峰の話を聞いていた。
「はい。実際に近くで見れば分かるかも知れませんが、まずは我々がそいつを知ることから始まりますので」
「ふむ……」と、相賀は白髪混じりの頭を掻き上げた。
「単純に、ハングリー精神とかじゃないですか?」
そう意見を述べた徳利だったが、間髪入れず鷲峰はそれを否定した。
「いえ、そういった単純なものではないと思います。」
「ハングリー精神なら、彼の一軍への執着心が物語ってるしね」鷲峰の言葉を補足するように、続けて相賀が言った。
「あ、そうですか……スミマセン」
そう言って、徳利は縮こまってしまった。
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