暗雲

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「まぁ、今すぐ樫琶が結果を残せるようにしてくれとは言ってないからね。じっくりコトコト煮込んじゃっていーよ。責任はあたしらが取るからさ」 すっかり窄んでしまった徳利を横目に、相賀は鷲峰に対して独特な言い回しで、剛紀について一任する意を伝えた。 「わかりました。尽力します」 鷲峰はそう言って頭を下げた。 晴れて鷲峰はウルフズの二軍打撃コーチに就任した。 「ちょ、ちょっと待って下さい。今あなた『あたし"ら"』って言いました?ねぇ、言いましたよね?」 問題なく話し合いも終わった頃に、徳利が再び席を立ち上がり相賀に食いかかった。 「君も本当に落ち着きがないねぇ」相賀はやれやれといった様子で徳利を一瞥した。 「それ、私も入ってます?もしかして、私も責任負うんですかぁ!?こんな、今の今まで聞かされてなかったのに?」 取り乱す徳利の問いかけに、相賀は「仕方ないじゃないか」と答えるだけだった。 傍らでは、鷲峰が苦笑いを浮かべていた。 「そ、そりゃあないですよ~!」 徳利の悲痛な叫びが食堂に響いた。
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