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カメラの先で笑っている男を見る。
程よく焼けた肌に、茶髪の髪。片耳にピアス。
いまどきの『チャラ男』だ。商品としては、悪くない。
人懐っこい笑顔も、読者を釘付けに出来るだろう。
カメラマンが、休憩いれまーす、と叫んだのと同時にモデルが俺の元に走り寄ってきた。
「編集長ぉ!来てくれてたんすか!」
ぱたぱたぱた、と尻尾が見える。
「・・・俺は撮影には付き添う主義だ」
「そうでしたね(笑)」
へへっ、と笑うこのモデルは『赤園虎次郎』。
たまたま俺がテレビを見ていたときに何かの番組でゲスト出演したアイドルグループのうちの一人。
他にも使えそうなメンバーはいたのだが、黄色は素人に毛がはえたようなものだったし、
青色は先にプロレス誌にとられてしまった。橙色は何を語っているのかわからなかったので却下。
メガネは俺の手がける雑誌のコンセプトにはあっていないし、緑もこれまたコンセプトとは若干ずれる。
残った1人で、雑誌のコンセプトにも合う最高の男が、こいつ。
「へんしゅうちょ~?俺、イケメンだったでしょ?」
キラキラとした笑顔を俺に向けてくる。
「・・・いいと思うぞ」
「ホント!? やった♪」
「・・・赤園、敬語を使え」
「堅苦しいなぁ、編集長は。いいじゃん」
俺が黙り込んだのと同時に、カメラマンが赤園に声をかけた。
撮影再開、らしい。
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