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撮影中の赤園には、不思議な魅力がある。
人懐っこい子供のような顔をしたかと思えば、誰も近づけさせないような、孤高の狼のような顔にもなる。
綺麗に手入れしてある肌も、端麗に整った顔立ちも、人を惹きつける大きな要因なのだろう。
彼のとる一挙一動に、夢中になってしまう。
お疲れ様でしたー! という大きな声でふと我に返った。
時計を見れば、2時間。
俺がここまで見ていられるモデルは初めてかもしれない。
続々と引き上げていくスタッフを掻き分けて、赤園がやって来た。
「お疲れ様でした」
「おう」
「ねぇ、編集長、どの写真が一番いいと思う?」
ポケットをごそごそさせて、何枚か写真を取り出す。
適当に押し込んだのだろう、くしゃくしゃになった写真が何枚か出てきた。
「どうしたんだ、これ」
「ん、すぐ印刷してもらった。編集長に見てほしかったから」
「・・・見てたぞ」
「俺のことは、ね。」
赤園が俺の目をじ、と見つめてくる。
「・・・どういうことだ」
赤園がキョロキョロとあたりを見渡した。スタッフはもう、誰もいない。
「編集長、俺のことずっと見てたでしょ?」
茶色がかったその瞳に、吸い込まれそうになる。
「ああ、いい商品だと思ってな」
「・・・そっか。で、どれがいいと思う?」
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