1.出会い

3/4
前へ
/52ページ
次へ
 撮影中の赤園には、不思議な魅力がある。 人懐っこい子供のような顔をしたかと思えば、誰も近づけさせないような、孤高の狼のような顔にもなる。 綺麗に手入れしてある肌も、端麗に整った顔立ちも、人を惹きつける大きな要因なのだろう。 彼のとる一挙一動に、夢中になってしまう。  お疲れ様でしたー! という大きな声でふと我に返った。 時計を見れば、2時間。 俺がここまで見ていられるモデルは初めてかもしれない。 続々と引き上げていくスタッフを掻き分けて、赤園がやって来た。 「お疲れ様でした」 「おう」 「ねぇ、編集長、どの写真が一番いいと思う?」 ポケットをごそごそさせて、何枚か写真を取り出す。 適当に押し込んだのだろう、くしゃくしゃになった写真が何枚か出てきた。 「どうしたんだ、これ」 「ん、すぐ印刷してもらった。編集長に見てほしかったから」 「・・・見てたぞ」 「俺のことは、ね。」 赤園が俺の目をじ、と見つめてくる。 「・・・どういうことだ」 赤園がキョロキョロとあたりを見渡した。スタッフはもう、誰もいない。 「編集長、俺のことずっと見てたでしょ?」 茶色がかったその瞳に、吸い込まれそうになる。 「ああ、いい商品だと思ってな」 「・・・そっか。で、どれがいいと思う?」
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加