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目が覚めた静は辺りを見渡した。
こんな場所は始めてみる、と身体を縛っている縄を切ろうとする。
ふと視線を感じ、そちらを見れば、自分の斬魄刀・喬美扇があった。
「喬美扇っ!!」
「目が覚めたようだな。君には申し訳ないが、これは借りて置く」
「誰が貴様の様なものに、私の斬魄刀を貸すものか!」
「これは、我らの夢のために必須なものでね。君がそう言っても、返す気はない」
「そう」
静の周りに風が集まり、静を中心に渦に成っていく。
その現象に巌龍らは驚いた。
もともと静の一族は風を操る貴族だ。
斬魄刀無しでもこのようなことは、赤子の手を捻るくらい簡単なことなのだ。
「鳴り響く轟音、雷鳴を呼べ」
静かに唱えれば、上空の雲が雷鳴を響かせている。
何時雷が落ちても可笑しくない状況だ。
「もう一度言う、わたしの喬美扇を返せ。さもなくば、このような場など消し炭にしてやる」
出来ることならば、さっさとこの場から茜雫を連れて逃げたい。
おそらく茜雫は別の場所で捕えて居るのだろうと予想が付く。
小さく息を吐きだした。
「落ちて大地を焦がせ、風雷」
雷鳴を響かせている雲から、幾つもの雷が降り注ぐ。
雷が落ちた場所は窪み、黒く焦げている。
その中静は立上った。
静に落ちて来た雷は静を縛って居た縄だけを焼け切った。
「ほぉ……斬魄刀無しで、そのようなことが出来るか」
「私が斬魄刀の力で風を使って居たとでも?失笑。我が一族は斬魄刀等必要無い一族ゆえな。私は『異端』なのだよ」
ニヤリと不敵に笑う。
スッと上にあげた手を、スッと前へと付きだせば静の背後から強風が巌龍らを襲う。
また手を右や左へと振れば、右や左からカマイタチが襲う。
「私と喬美扇との相性がいいのは、互いの力を相乗効果で使えるからよ」
気を抜けば、この強風に身体を持って行かれそうになる。
だからと言って、やすやすと返す訳にはいかない。
「もう少し大人しくして貰いたかったがな」
「お淑やかに、っていうのは出来ない性分なのよ。………吹付け、切り刻め、雷鳴を轟かせよ!風神!!」
四方八方から巻き上がる竜巻に行き場を塞がれる。
静はひとまず斬魄刀を諦め、茜雫を優先させることにした。
それに気付いたが、行き先を邪魔する竜巻に苛立ちを募らせた。
「茜雫ぁぁぁぁ!!!」
静の声が響き渡る。
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