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かすがは冬獅郎の隣に並ぶ。
それを疑問にも思わなかったが、ふと疑問に思った。
「おい、かすが。静は良いのか?」
「大丈夫。茜雫と一緒に助けてくれるしょ」
「はあ?」
「だって、私は冬獅郎と居た方が冷静になれるって知ってるもん」
また何と言う屁理屈などと溜息を吐きだした。
ふと後ろに視線をやれば、苦笑して居る堕墜が居た。
もう見慣れた光景の一つなのだろう。
「来るよ、冬獅郎」
「あぁ」
此処が戦場だと言う空気がかすがから漂う。
きっとかすがはすぐにでも静を助け出したいのだろう。
でもそれをしないのは、自分の為でもあり静の為だと押えて居るのだろう。
「堕墜、欠魂が彼らの力の源。お願いできるわね」
「勿論です、かすが様」
「私は近くに居るけど、欠魂を優先する」
「ハッ。もとからそのつもりだったんだろ」
「あはは。バレちゃったぁ?」
これも何時もの事。
なんだか、懐かしく感じた。
静は茜雫を抱きしめて居た。
気を失ってはいるが、何故か暖かいものに包まれている気がした。
『静…静…』
「茜雫?」
『うん、大丈夫?』
「ふふふ。こうやって欠魂に絡み付かれて居るけど、茜雫の傍に居るわ。貴女に危害を加えたら、八つ裂きにしてやろうと思って」
『無事なら良かった……今、助けてあげる』
「ううん、良いの」
『え?』
「私は茜雫を守りたい。だから、茜雫の傍に居させて」
『静……』
自分の中ではもう解っている。
茜雫……思念珠は記憶の集合体で、記憶を持たない欠魂が集まるのは必然なこと。
それが輪廻から外れてしまい、戻るために起こるから。
少しでも寂しい思いをさせないで送り出せたら、と簡単に思っていた。
けれど巌龍みたいな奴が、茜雫が持つ力を悪用しようとしていることが許したくなかった。
きっと隊長であるかすがが伝えたかったのは、『命(メイ)』だけじゃない『感情』の部分だったのかもしれないと。
だから、このまま茜雫の傍に居た。
それは素直な自分の気持ちだった。
『ねぇ、静』
「なに?」
『静の上司……かすが、だっけ?』
「うん。かすが様がどうしたの?」
『もう一度、会ってお礼が言いたいな』
「会えるわ。あの人は何って居たって、無茶を平気でする人だもの」
茜雫が笑った。
そんな気がした。
それと同時にかすがの霊圧を感じた。
かすがだけじゃなく、他の死神たちの霊圧も。
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