Memory Of Nobody

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 静の義駭は堕墜とかすがの趣味が入っていた所為か、黒地の振袖に淡い紫で薄手のポンチョを羽織った姿。 その姿は現世では浮いたような格好なのだが、藍黒い静の髪に貴族出身という事もあり、振り袖姿も様に成っている。 「此処が『クロサキ病院』ですか」 辺りを見渡し、溜息を吐き出す。 感じる霊圧からして、此処に目的の人物が居るとは思えない。 だからと言って、これ以上動きまわりたくもない。 小さく息を吐きだし、呼出鈴…インターホンを鳴らす。 出て来たのは目的の人物と同じ黒髪の少女。 「すみませんが、黒崎一護さんはいらっしゃいますか」 「一兄?まだ帰ってきてないけど……アンタ、誰?」 「私は霧風静と申します。ちょっと彼に頼みたいことが御座いまして、こちらにお伺いしたのですが……改めた方がいいですね」 「まぁ……何時帰ってくるか解らないし…急がないなら、そうして下さい」 『えぇ、急ぎませんから大丈夫です』とだけ告げ、黒崎邸を後にした。 そのあと感じた霊圧の上昇した方へと走り出した。 振り袖姿で走り出しか静を見送った一護の妹は首を傾げた。  死神だけではなく虚の霊圧を感じ、即座に義駭を脱いだまでは良かった。 目の前に居る虚の数多さに、何度目か解らない溜息を付かせた。 「風神の舞」 斬魄刀・喬美扇は名前の通り扇の形をしている。 扇を広げ、右から左へと振れば、竜巻が虚たちを飲み込み切り裂き葬っていく。 街路灯の天辺へと着地し、また喬美扇を振る。 今度は左から右へと振る。 「風陣の舞」 虚を囲むように風を起こす。 扇を閉じ、上へと上げる。 虚の頭上に雷鳴が響く。 そのまままっすぐに扇を振り下ろした。 「風雷の舞」 振り下ろされた扇が合図のように、虚たちの頭上に雷が降り注いだ。 風陣の舞で範囲指定して居るため、そのほかのところには落ちない。  虚たちを葬った後、怪我をしていた死神へと近付く。 治癒系の軌道は使えないが、己の斬魄刀が持つ風の力を使えば、応急措置は出来る。 「動かないで、応急措置しますから。……風香(フウカ)の舞」 患部に扇の先を充てれば、仄かに香る匂いが良い心地にしてくれる。 そっと扇を離せば、出血は止まりうっすらとだが傷口を塞いでいる。 「後は頼みました」 「は、はいっ」 静は脱ぎ捨てた義駭へと歩いて行った。
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