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静は茜雫を探した。
もしかしたら茜雫がその思念珠かもしれないと感じたからだ。
でも、そうだとして彼女にそれを伝えることが出来るだろうか?
彼女……茜雫は思念珠かもしれないけれど、『今、生きて居る』ことには変わりないのかもしれない。
そう思うと、探していた足が止まる。
ふと立ち止まり廻りを見れば、目の前に茜雫と一護の姿があった。
「あ。黒崎さん…?」
「お前、静さん」
「あれ?知り合い……って、あん時の?!」
自分を吹き飛ばしたことを覚えて居たのだろうか。
勿論、静の方に非がある。
それを離せば、一護は笑いだした。
茜雫の方も『それなら仕方が無いかー』と笑って許してくれた。
やっぱり、茜雫は『生きて』いた。
それを否定することは彼女を傷つけてしまう事は解っていた。
なら、傍で見守れば良いだけ。
かすが同様に感情で動く自分に酷く狼狽した。
「改めるわ。あの時はごめんなさい。私は零番隊三席の霧風静」
「私は茜雫よ、よろしく」
「よろしく」
茜雫の手は暖かい。
選ばなかったことを後悔したくないと、心に決めた。
一護から今回の事で冬獅郎がこちらに来ていることを知った
恐らく自分と入れ違いに成ったのだろうと。
義駭に入り、深く考え事をしていたため感じなかったのだろう。
そう思うと、なんだか情けなく感じた。
「その欠魂と書思念珠とかって、どんな形をしてるのさー」
「どんな形にでも成り得る、という事までは私たちの隊では把握して居るわ。ただ、それが何かまでは特定には至っていない」
「へぇー…冬獅郎たちは全然掴めていねぇようだったぜ?」
「当たり前です。我が隊長の持つ宝珠や斬魄刀によって探し当てられた賜物なのですから」
一護を睨みつければ、怯む一護。
優雅に紅茶を飲む静の姿は、何処から見ても良い所のお嬢様にしか見えない。
本人からは一度もそのようなことは聞いたことはない。
「振り袖って……動きにくくねぇか?」
「私にはその格好の方が動きにくかったですけれど」
「あ、そう」
洋服を試したらしいが、しっくりとは来なかったようだ。
非番の日はもっぱら振り袖姿なので、洋服とは全く縁はなかった。
現世任務も死覇装の事が多い。
滞在任務はしばらくして居なかったのだから尚更。
「今日はもう遅いから、明日、赤と白の何者かが出た場所へ行きましょう。そこにしか手掛りが無いのですから」
そう言い、静は席を立った。
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