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★保科凌雅★
「あー授業かったりぃ~、早く部活行きてぇなぁ~」
窓際一番後ろの席で頬杖をついて授業を聞き流す俺は保科凌雅。高校3年の今、就職やら進学やらでみんな必死になっている。
でも俺は自分の将来のことなんて一ミリも考えてない。考えたくもない。生活態度で教師からのポイントが低く、頭も悪い俺なんて就職活動困難必至なのは目に見えてる。就職決まって卒業出来たとしてもやっぱり気がかりなのは………
「…いって!何すんだよ、聖悟!」
「お前が頬杖をついてアホ面晒しているのが気にくわなかったから殴っただけだ。」
この、性格の悪い毒舌野郎は俺の隣の席の御臣聖悟。高校になって三年間同じクラスで隣の席。仲は悪いが腐れ縁みたいなもんだ。
「お前だって頬杖ついてんじゃねーか!どうせお前も授業分かんなくて右から左へ受け流してんだろー」
ヒヒッと意地悪く笑ってみせると聖悟は怒るどころか寂しげな表情を見せた。
「そうだな。俺が卒業すれば柚太を一人ぼっちにすることになる。それが近い今、まともに授業も聞いていられないな」
「聖悟…」
そう。俺も誰にも言えずにいたが考えてた。就職出来るかが心配なんじゃない。俺はあいつをここで一人にしてしまうことを案じていた。俺にとって高校三年間で一番大切にしてきた……一番優先してきた…恋人のことを。
でも考えたくなかった。俺が一人になってあいつも一人にさせてしまうこと。
「真面目に国語受けっか」
俺は急に教科書を出し頬杖をつくのをやめ、教卓にいる国語教師の話に耳を傾ける。まるで心のわだかまりを忘れようとするかのように。
「凌雅が国語の教科書を読んでいる。明日雪でも降るかな」
「う、うっせぇ!まだ5月だ!降るわけねーだろ!」
窓からは散っていく桜の花がひらひらと舞っていくのが見えた…―
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