好きなひと

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  苦手な制服のネクタイをどうにか仕上げて、カバンの中身を最終チェックする。 よしっ、大丈夫! 部屋から玄関まで一直線の廊下をドタドタと走ってローファーを履き、 「行ってきまーす!」 と玄関を飛び出していく。 後ろからママの小言が聞こえたけど、もちろん聞こえないふり。 それにしても、先に行くなんてひどい! 寝坊した自分は無視して、置いていかれたことに腹を立てながら、家を出た瞬間。 「8分だな」 思いがけず声がして、慌てて足を止める。 でも、すでに走り出していたあたしは止まりきれずに、その人の前を通りすぎてしまった。 「一真!?」 勢いよく振り返ったあたしは、思わず大きな声で名前を呼んでいたんだ。  
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