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「葵。これから、何かある?」
放課後、肩をトントンと叩いて話しかけてきたのは、冬也君だ。
「え?えーと…」
特に予定はなかったけど、あたしはすぐには答えられなかった。
何となく、予感がしたから。
うぅっ。…想像しただけで、胃が痛くなりそうだよ。
「何もなかったら…」
「ごっめーん!葵は、あたしたちと約束があるから。ね、葵!」
冬也君の話を遮るように、無駄に大きい声をだした優花が、後ろから抱きついてきた。
あまりの勢いで一瞬息が止まり、うっ、と小さな呻き声をあげる。
ドキドキする心臓と、少し乱れた呼吸を整えながらゆっくり振り返ると、直ぐ横に優花の顔。
その肩越しにはまりのも見える。
「じゃ、また明日~!」
誰の返事も待たずに、優花はあたしを引きずるように教室を後にした。
ポカンとした顔の冬也君だけを残して。
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