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「本当に出していいの?」
しつこく何度も確認されると、無性に不安になる。
…やっぱり、何も今日急いで出す事ないんじゃない?
「書き間違いはないよね?」
怖じ気づいた私は、さり気なく婚姻届の奪取を試みる。
悪あがき、とも言う。
「ん?」
「確認してもいい?」
彼の手中にある婚姻届に手を伸ばすと、ヒョイと手を高く挙げられる。
「ちょっ…見せて?」
私の手の届かないのをいい事に、彼は婚姻届を素早く目視しヒラヒラさせた。
「んー…大丈夫。記入ミスはないよ」
「や…だから、見せて?」
「じゃ、出すからね」
そう言って、小悪魔がニッコリ。
「だから、待っ――――…」
「すみません。これ、お願いします」
慌てて制止する私を無視して、圭吾は婚姻届を窓口に提出してしまった。
「婚姻届ですね?おめでとうございます」
窓口のお姉さんから祝福の言葉を与えられる。
悪あがきの甲斐なく、婚姻届はあっさり受理された。
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