想えば想うほど傷口は開く一方なのです

3/3
前へ
/43ページ
次へ
「どうすりゃ良いんだろ。」 持て余した言葉がぽつりと零れ落ちた。 どうすることも出来ないと分かり切ってるはずなのに、どうすれば良いかなんて。 これ以上意味のないことはない 。 それでも口に出してしまう。 逆に出来ることなんて口に出すくらいしかないのだ。 「どした、押見ちゃん?」 池谷の声にはっとして顔を上げる。 しまった、というかなんというか。 そりゃ2人でいて独り言零したてたら反応するよね、なんて妙な納得のほうが純粋な驚きより大きかった。 「いや、別に。」 「変な押見ちゃん。」 そう言って池谷はどこか心配そうに優しく笑ってた。 別に、としか返せない。 言えるわけがないんだ。 お前には嫁がいて娘もいて、そう家庭があるんだ。 何も変えられない。 変えることなんて許されない。 そう思うのに、そうやって笑うお前を見たら、やっぱ好きだなって思い知らされるんだ。 これからも俺は、八方塞がりの中でお前を想って傷つき続けるしかないんだ。 でも、お前の笑顔の為だったら、俺は喜んで傷つき続けるよ。 fin.
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加