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「どうすりゃ良いんだろ。」
持て余した言葉がぽつりと零れ落ちた。
どうすることも出来ないと分かり切ってるはずなのに、どうすれば良いかなんて。
これ以上意味のないことはない 。
それでも口に出してしまう。
逆に出来ることなんて口に出すくらいしかないのだ。
「どした、押見ちゃん?」
池谷の声にはっとして顔を上げる。
しまった、というかなんというか。
そりゃ2人でいて独り言零したてたら反応するよね、なんて妙な納得のほうが純粋な驚きより大きかった。
「いや、別に。」
「変な押見ちゃん。」
そう言って池谷はどこか心配そうに優しく笑ってた。
別に、としか返せない。
言えるわけがないんだ。
お前には嫁がいて娘もいて、そう家庭があるんだ。
何も変えられない。
変えることなんて許されない。
そう思うのに、そうやって笑うお前を見たら、やっぱ好きだなって思い知らされるんだ。
これからも俺は、八方塞がりの中でお前を想って傷つき続けるしかないんだ。
でも、お前の笑顔の為だったら、俺は喜んで傷つき続けるよ。
fin.
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