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“どうせ、中にいるんだろ?
いれてくれよ。”
春日からのメール。
面倒臭い気持ちに変わりはないのに、自然と立ち上がってドアへ向かっている自分がいて少し驚く。
「ほら、やっぱりいるんじゃない。」
ドアを開けてやったら、間髪入れずに笑顔の春日がそう言った。
「うるせー、ばーか。」
そう返した俺の声は少し喜びが滲んでいた。
ちょっぴり、泣きそうになった。
おじゃましやーす!
なんて言いつつも我が物顔で家にあがる春日を追っかけていつものように隣に座る。
「あんなメール送って、家にいなかったらどーすんだよ。」
なんだか悔しくてからかうように言うと、ぽふっと春日の掌が俺の頭に乗った。
「春日には分かるんだなあ、これが。
若林のことならなんだって。」
そう言うと春日は、ぽんぽんと頭を撫でた。
俺の頭を包み込むその大きな手が温かくて、優しくて、堪らなく愛おしくて。
なんだか安心して胸がすっと軽くなった。
いつだってお前のその掌は俺を安心させてくれる。
いつだってお前のその掌に俺は救われるんだ。
ほら、お前の隣なら煩わしい雨音さえも時を彩る綺麗な音色に変わるんだ。
第2位 頭を撫でられる
fin.
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