ありふれた、その

3/5
前へ
/43ページ
次へ
「いや、もう。 お前に口はないんか!」 唸り声しか上げない俺に藤原がつっこんだ。 「あるわぼけー。」 重い口を開いて悪態を吐く。 口をほとんど開かずに言葉を発してるから呂律が上手く回っとらんかった。 「そないな文句はちゃんと言えんのかいな。」 藤原が小さく笑いながらそう言うから、俺も釣られて笑った。 はぁー、なんやめっちゃ落ち着く。 ぼんやりとした頭ん中にやけにはっきりと響く藤原の声。 それがめっちゃ心地好い。 返事はむちゃくちゃ面倒やけどこの声をずっと聞いていたい。 たわいもない、しょーもない会話が途切れるんがなんとなく寂しい。 藤原の意識が自分に向いててほしい。 そう、強く思った。 なんや自分めっちゃ我が儘やな、とは思うけど今の俺にはそんなんどうでもいい。 考えるん面倒やし、構っててほしくてしゃあないってことしか頭にないし。 .
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加