63人が本棚に入れています
本棚に追加
「君の着ているその服も
そのヘアスタイルも
その喜怒哀楽も
香も 仕種も 癖のあるキスも
全部、 全部全部好きでした。」
彼はそう言って 僕に優しいキスをして 「サヨウナラ」 そう言って
いなくなった。
「癖のあるキスって何だよ……」
彼のいなくなった部屋は僕一人には広すぎた。
彼の荷物はリュック一つに納まるほどの少なさだった。
彼と寝たベッドは何回も寝返りが出来る大きさだった。
彼と一緒に囲った食卓にはフルコースが置けた。
彼と一緒に煙草を吸ったベランダは一人じゃ寒くて鼻水が出た。
君と交わした好きという言葉とキスは
もう交わされない。
『好き、なんだ』
いつもクールな君が顔を真っ赤にして言った。
『へ、』
『求愛、なんだが……』
『ぶはっ』
彼が可愛らしく見えた。愛おしく思えた。
ああ、僕は本当に君が好きだったんだ。
おわり
最初のコメントを投稿しよう!