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ーーーザアァァァーーー
前も見えないほどの豪雨の中、都内の高級マンションの下に人だかりができていた。
アスファルトに当たった雨は跳ね返り、人々の足をぐっしょりと濡らす。
しかし、そこに何かを囲む様に集まっている人々はそんなことは眼中にない様子で、中心にあるモノを見ていた。
「わあぁぁぁ~っ!
兄さん!
兄さーんっっ!」
マンションの中から色白の顔を真っ青にしながら黒髪の少年が走って来た。
「兄さんっ」
少年は集まっている人々を掻き分け、中心に横たわっている青年のわきに跪いた。
「救急車呼んだから、もうすぐくるからねっ」
人ごみの中から一人の婦人が声をかけた。
その声が聞こえているのかわからない。
少年はただただ、背が高く少し細身の体型で真っ直ぐでサラサラした黒髪を雨で濡らす青年にすがりつくしかできなかった。
「…っ……くっ…うぅっ………」
声にならない声をあげ、泣いていた。
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