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「あ…。あのぉ」
一人の少年が下校中に後ろから聞いた声は小さく、妙におどおどしていた。
少年が反射的に振り向くと、その先には白いワンピース一枚というまだ春になりかけのこの季節にはいくらなんでも寒すぎるだろうという服をきた十歳前後の小さな少女が、どこからどうみても困っていると思われる姿で立っていた。
心優しい少年少女だったら目の前の少女をほおっては置けなかっただろう。忙しいとしても何かしらの言葉をかけるかも知れない。
しかし少年は、少女の姿を見たとたんに素早く顔を反らした。
それは、この少女を見なかった事にするという彼の選択肢の一つ。
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