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僕のたかしくんとの思い出は、実は僕の記憶にある最初の歴史となる。
記憶をさかのぼり、一番古いのが、これ。つまり一切が忘れられた、物心つく前の様々な失われし思い出を経て、はじめての思い出としてインプットされているのが、「たかしくん」との出会い。
確か3歳くらいだったか、曖昧である。
僕はうちの前の坂を三輪車でキコキコと上っていた。うちは長崎の海の見える高台の、坂の田舎町にあった。僕はそこで大人になるまでなんとなくボヘッと過ごしていた。
大人なら10歩くらい上ったところに、平坦な道があり、そこからまた坂が山のほうに続く。
それをまだ幼い僕は一生懸命上っていた。
その平坦な道に差し掛かったところの脇にあるのが、子どものころからよく遊んでいた公園。
幼い僕はそこで落ち着き、三輪車をひっくり返して、かき氷屋さんになったつもりでペダルを回して遊んでいた。
するとふとあるお兄ちゃんが近づいてきた。
僕はボヘッとしたドンくさい子どもだったからその近所のお兄ちゃんを暖かく迎え入れたのだろう。
これまでの記憶は曖昧だが、これは鮮明に覚えている。
そのお兄ちゃんがどういう経緯かわからないが、
突然僕の腕をガブリ。
まだちっちゃい物心ついたかつかないかの僕は多分泣いていた。
僕はかよわい白い腕に、くっきり歯形がついていたのを覚えている。
こうして僕とたかしくんの奇妙な思い出が始まったのです。
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