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2コマになり、俺は豊橋先生の研究室をノックした。
「はいよー」
先生の部屋は随分と洒落ていた。青の遮光カーテンはどこかのいい店で買ったのか、うっすら幾何学模様が入っていた。
そういや、学生の頃からこの人のイメージカラーは青だった。さりげなく飾られたマグリットの前衛的なポスターもセンスが冴えている。
「お洒落な部屋で研究されてるんですね」
「んー、そうか?」
パソコンに向き合ったまま顔を上げないということは、割と忙しいらしい。
「お忙しいなら改めますけど」
「いや、大丈夫。出席を打ち込んでるだけだから」
なんとなく所在なさ気にしてる俺に気づいたのか、先生は手を止めた。
「すまんね、出席なんか別にどうでもいいんだけど、最近は大学側が出席にうるさくてさ」
昔のお前が今大学にいたら卒業とか無理だろうな、と軽く毒を吐いて先生は笑った。耳が痛い話だ。
俺はさっきの焼き芋2人組のことを思い出した。
「そういや、さっきそこの裏で焼き芋をしてる学生がいました」
先生は「なんだそら」と訝しんだ。そりゃそうだな、非常識にも程がある。
「めちゃくちゃ面白そうだなあ」
そうだ、先生はこういう人だった。
「いいなあ、俺も芋食いたい」と無邪気に先生は言った。
「まあ、焼き芋になる前に俺にバレて火を消してましたけど」
「お前も冷たい大人になったもんだな」
軽蔑するような顔をされる。
「いやいや、赴任初日に火事は勘弁ですから」
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