赴任

15/35
前へ
/355ページ
次へ
 そして、案の定店で待っていたのは、焼き芋2人組だった。俺を見つけた片割れが声を上げた。 「先生だったんだー、うわー」 「なによ、舞ちゃん知り合いなの?」  そしてすぐにまずいと思ったのか、俺の顔を一度見た後で「いえ、しりません」と棒読みした。  いやいや、もう遅いだろ。俺は一応フォローするつもりで先生たちに言った。 「いや、今日大学内で道に迷って、ちょっと声をかけたんです」  すると、もう片割れがくすっと笑う。俺がフォローしてるのに笑うとはなんだ。 「まあまあ、安藤も手が早いから、仕方ないということで、ね、吉沢先生」 「そうですね、若いから仕方ないわよね」  意味不明な豊橋先生の一言で、納得した吉沢先生。また2対1の構図。なんか出だしから損しまくってる俺。 「それより、もう純ちゃんに頼んでくれてるの?」  豊橋先生は学生に聞いた。 「はい、純さんがいい具合に色々用意してくれてます」  その声を聞いて、店の奥から恰幅のいい大きな女性が現れた。 「あら、こんばんは、先生お待ちしてましたよ」 「純ちゃんやっほー、これ、安藤」 「ああ、あの安藤さん」 「え、先生、なんで共通の知り合いみたいになってるんですか」  すると、全員が俺の顔を見て、なにやら全員が俺のことを知ってるよといった顔をした。 「大丈夫、安藤のことはうんと前からみんなに話してあるから」 「…はい?」
/355ページ

最初のコメントを投稿しよう!

381人が本棚に入れています
本棚に追加