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いつものように無防備な顔をしているのだろう。背後で「んー」とか「あー」とか唸っている。俺の名前を呼んだ後、しばらくまた無言で毛布に包まったようだ。
なんとなく、窓の外を見ていた。小さい鳥が何羽か右から左へ飛んでいく。
「香奈、そろそろ起きないと遅刻するよ」
俺の呼びかけは、あえて無視されたようだった。少しだけ毛布が音を立てて、すぐにまた気配が消された。
「おいこら、起きなさい」
俺はソファから立ち上がって、香奈の占拠するベットを荒らしに行った。毛布を剥ごうとすると、足を絡ませて抗戦の体制を見せた。
「ん~あと2分だけ寝かせてよう」
「おお、じゃあもう好きなだけどうぞ」
保護者じゃないんだ。こいつがどれだけ遅刻しようが欠席しようが知ったこっちゃない。置いてきぼりにするつもりで、俺はシャワーを浴びに浴室へ向かった。すると、慌てた足音を立てて、香奈がやってきた。
「待ってよー」
俺が下着を脱ごうとしたところで、いつ脱いだのか、香奈は裸で俺より先に浴室へ入っていった。
「お前、俺より先に朝シャンとはいい度胸だな」
屈託のない笑顔で俺に振り返る。
「先生も急がないと遅刻するよ」
「調子乗んなよ」
勢いよく出たシャワーは香奈の艶のある体を濡らしていった。
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