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渦巻駅に着くと、俺はすみやかに砂崎を抱え起こした。
「着いたよ」
「はい…」
なんとか自力で立ち上がろうとするがよろめく。脇の下から持ち上げてやると、スムーズに電車から降りられた。
夜の無人駅。どうも駅員は昼間しかいないらしい。
「砂崎、お前んちどこなの」
砂崎は「んー」と言ってしばらく無言になると、深く深呼吸をした。そして復活をアピールするように、顔を精一杯上げた。
「ここから、すぐのとこ、です」
口調はまだ弱弱しい。
「もう歩けるので、大丈夫です」
俺に遠慮するように、腕を俺から離すと「ほら」とひとりで立てるアピールをした。
「よし、じゃあ、俺はお前が家に入るとこまで見届けるから」
さすがに家族を呼び出して迎えに来いという勇気はなかった。
砂崎が前を歩き出すと、俺はゆっくりついて行った。
「お前さ、スカート折れてるよ」
そう言うと、砂崎は振り向かず無言でお尻の部分を手で押さえた。
そのまま話すことなく、無言で道を行く。駅を出てからここまでの道は、俺もよく知っている道だった。というより、まさに俺の帰り道と同じだった。
そして右に曲がる。
「なあ、砂崎」
呼びかけたが、返事はなかった。
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