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「先生、何号室ですか?」
「教えない」
「すいません、ちょっとテンションが上がって聞いちゃいました」
力なく微笑むと砂崎はエレベーターで3階を押す。
「あ、俺も3階」
「え」
「近いわ」
エレベーターの中でも白い息が上がる。砂崎は立っているのが辛いのか、壁にもたれるように立つ。
「さっきより息切れてるけど、大丈夫なの?」
暗闇であまり気がつかなかったが、顔が血の気を失ったように白い。
「駅から歩くの無理してたろ」
「だって、先生に甘えるのもよくないと思って」
「店から散々迷惑だったのに、何をいまさら」
砂崎は応答せず、エレベーターの壁からずり落ちるように座り込んだ。
「ちょっと、お前ぜんぜん駄目だろ」
3階に着いたエレベーターが開く。俺はひとまず砂崎を抱えて外へ出る。背中でエレベーターが閉まる。
呼吸が荒くなり、砂崎の体が上下に揺れる。過呼吸になりかけている。
「だめだな、ちょっとここで待ってろ」
俺はそう言い残すと、自分の部屋へ急いだ。確かビニール袋があったはず。
「せ、せんせい、待って」
マンションの廊下で砂崎が俺を呼ぶ。
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