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「行かないで」
行かないでって、お前。砂崎の元へ戻ると、俺は腕を引かれた。
「大丈夫、ですから」
「いーや、そんな風に見えないね」
砂崎は息を整えるために幾らか息を吸ったが、うまくいかないのか、余計に苦しそうにした。
「そうだ、お前家の鍵は?ポケット?」
頷くと、コートの左ポケットを探ろうとした。
「いいよ、俺が探すから」
俺はポケットに手を入れたが、鍵の擦れる音がしない。右ポケットかと思ったが、右にはポケットがそもそもついていない。
「なあ、鞄の中とかじゃないか?」
俺はしゃがんで背負っていた彼女のリュックサックの外ポケットを漁った。ガム、携帯、イヤホン、ティッシュ、ガムのごみ。
さては中かと思い、思い切ってファスナーを開けて中を覗き込む。ノート、筆箱、さつまいも、財布。
以上。
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