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部屋に入り、とりあえずソファに座らせたが、ここから見てもよくわかるくらい震えている。
俺が部屋に招き入れたから怯えているわけじゃないことを祈りつつ、とりあえず備え付けの冷蔵庫に入れていた水を取り出してコップに注いだ。
「ほら、水飲もうか」
砂崎の手がコップに伸びる。薄暗い部屋の中で光ってるんじゃないかと思うくらい彼女の手は白い。
落としやしないかと、いつ手からコップが離れてもいいように、俺はかがんで様子を見ていた。
少しずつ口に含み、半分ほど飲んだところで休憩した。
「ありがとうございます」
この世で一番か弱いレベル1のモンスター。そんな感じ。
「いいけど、いつも酒飲むとこうなの?」
少し目を伏せて首を傾げる。
「いつもじゃないんですけど、時々体調に合わない時があるみたいで」
砂崎は自分の肩を抱くように縮こまった。
「寒いよな、ちょっと待ってて、なんか羽織るもん持ってくるわ」
「ごめんなさい」
瞬時に気を使わせて申し訳ないと、立ち上がる俺に詫びる。
確かこの箱だっけ。開梱できていないダンボールのラベルを確認する。「冬物」と書いた箱のガムテープを引き剥がす。
背後で砂崎は上着を脱いでいるようだった。
「もう一回鍵ないか確認してみて」
そう言うと素直に、コートのポケットや鞄の中を確認し始めた。まあないんだろうけど、万が一ってこともある。
その淡い期待は砂崎も持っているようだったが、結局何もサルベージされることはなかった。
俺は最近洗った記憶のあるパーカーを取り出した。サイズは大きいが、裏地がボアだから丁度いいだろう。
「はい、これ着な」
鞄の中身をしまう砂崎の背中にかけた。すっぽりパーカーに覆われる。
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