赴任

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「こういう布系の置物みたいだな」  そう言うと、パーカーに包まった砂崎はふふっと小さく笑い、さらにフードをかぶり、自分の身を覆った。 「どうですか、私いなくなりました?」  ちらっと俺を見上げていたずら顔で笑う。大きく開いた瞳。気まずい空気を緩めようとしているんだろうけど。 「お前、そういうの無意識でやるの?」  なにを指摘されているのか分からないらしく首を傾げた。パーカーの肌触りを確かめ、そっとソファに座り直した。 「意識と行動は私の研究テーマなんです」  ポツリと呟く。 「知ってるよ。豊橋研究室の王道テーマだしな」  今日受け取った資料の中でも砂崎の研究内容の説明があった。 「舞がコミュニケーションを専門に扱った研究がしたいって、吉沢先生のところに行ったので」 「そっか、大橋はそれで吉沢先生のところに行ったんだな。俺は、お前が選んだテーマは、どうして人が行動を起こすのかなんて風呂敷としては広いが、シチュエーションをしっかり決めて取り組めば、人間の行動パターンや心理の深さをよく理解できて面白いと思う」  俺も学部にいた頃は豊橋研で同じようなテーマを扱った。とんでもない量のデータ収集をすることになったが、一度始めると熱中して分析作業ができた。 「はい。これから大変になってくると思うけど、頑張ります」  なんか今先生と学生っぽい話してるな俺。 「手伝えることあったら言って。応援する」  砂崎は少し嬉しそうにはにかんだ。
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