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やけに小さい大学だと思った。先生からは正門で待つように言われて立っていた。
朝1コマ寸前の8時50分、門をくぐっていく学生からの視線はなかなかの痛さだった。
そりゃそうだ、女子大だからな。
「スーツの人とか久々に見た」
「だよね、あたしも今思った」
そんな会話が俺の数メートル先でこそこそ繰り広げられる。
声を落とせよ、声を。
20そこいらの女子なんて今までの大学でも蟻並みにいた。それでも、この女子大の門をくぐっていくこいつらは、見るからに…。
「派手だろう、ここ」
背後で声がして俺は振り返った。
「お、お久しぶりっす」
「んだよ、「っす」って。もっと敬えよ、俺を」
豊橋先生は、相変わらずのくしゃくしゃな笑顔を撒き散らして俺の肩を叩いた。
「しかし、お前老けたな、もう30ぐらいじゃねえの?」
「いや、まだ29です、て強調するほど若くないですけど」
先生は上から下まで俺を見た。
「で、なんなの、お前のそのスーツ姿、気取ってんの?」
豊橋先生は、ほぼ寝巻きなんじゃないかというような、上下紺色のスウェットだった。変わらないな、こういうとこ。
「気取ってないです、先生の格好も教授の風格ゼロですね」
「んだよ、嫌味言うなら、帰れよ」
子供かよ。
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