冬休み前

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 純さんは、どうやらお酒が飲めないらしい。子どもが生まれて体質が変わリ、今はお店の酔っ払いを丁寧に優しくお会計まで誘うのが仕事だそうだ。 「だから先生、純さんがいるので私はお酒をお客さんから頂いても、大丈夫なんです」  今日の砂崎は元気そうだった。この間は気がついたら酎ハイ一杯でうなだれてしおれていたのに。 「まあ今日は元気そうでよかったよ。先生はもう終わってるみたいだけど」  キープのボトルをあっという間に空にして、豊橋先生はテーブルで船を漕いでいた。途中まで純さんと喋っているようだったが、純さんが優しく丁寧に先生のお金を頂戴したのが終焉の合図だったようだ。 「純さん、タクシー呼んでもらっていいですか」 「もうあと5分くらいかしら」  もう既に呼んでいたようで、純さんは先生のコートをハンガーから下ろした。 「さすがですね、スムーズな取り扱いありがとうございます」  
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