冬休み前

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 駅のホームは閑散としていた。この時間帯になると渦巻方面に向かうローカル線を利用する乗客は数人のようだった。  電車をぼんやり待った。 「なんだろうな、もう少し理想的な酔いの冷め方があったかもしれない」  砂崎は「なんだかごめんなさい」と言った。 「いや、責めてるわけじゃないよ。お前のこと気になってるとか言った自分を振り返っただけ」  隣で萎れる彼女に訂正した。 「人間が酒を飲むのって、期待効果を求めるからだと俺は思ってる」  黙って考えていると気まずさが増すと思い、俺は話をつなげた。 「それって、嫌な出来事を忘れるために飲みたいとか、そういうことですか?」 「そう。もし今日、飲んでなかったら、お前は俺に自分のことどう思うかなんて聞かなかっただろうなって思ってさ」 「そうかもしれない」と頷いて、神妙な顔をする。 「自分のことを先生がどう思ってるか知りたいって、どこかで思ってたかもしれません」 「もしそうだとしたら、不思議だよな。俺にはその理由が想像つかない」 「理由は…」としばらく考えたようだが、その続きは出てこなかった。 「まあ、全部に理由なんてつけたらキリがないから」  アナウンスが鳴り、電車が滑るようにホームに入ってきたところで会話を畳んだ。
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