冬休み前

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「でもまあ、お前の親友としての意見は、どうせ続けるならちゃんとしろ、だな」 「ちゃんとするって何?」 「お前の話聞いてると、環境や肩書きのせいにして曖昧なまま続けようとするクズな根性しか感じない。そうなっちゃった前提とかじゃなくて、付き合った前提で話せるように関係を明確にしろってこと。周りに知られない方法なんて幾らでもあるだろ」 「クズ…付き合う…」 「なんでそれがピンとこないんだよ」  慎太郎が苦笑する。 「不可抗力に悩まされてると思ったら大間違いだと思うよ」  一体何の研究をやってきたんだか、とキツいダメ出しを食らう。 「俺ってやっぱり恋愛知能指数低いよな」  大学時代も長続きしなかった。周りから中学生みたいな恋愛してるからだと言われたのを未だに覚えてる。 「だとしたら今回は相当難しいコースを選んだな」  面白そうに言うと、慎太郎はコーヒーを飲み干した。 「いいんじゃない?そのカチカチの頭が柔らかくなるチャンスだと思えば」 「そんな他人事みたいに言うなよ」 「いや、あえて言うけど、他人事です」  時計を見て慎太郎は「さてさて」と言うと、そそくさとテーブルの上の本を鞄にしまった。 「ユウちゃん来たから行くわ。じゃ、ちゃんとする方向でよろしく。相手の立場になって考えること。そして今度俺に若い彼女に会わせること」  図体のでかい男は俺の返事を待たず立ち上がり、自分のカップを返却して店から出て行った。
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