382人が本棚に入れています
本棚に追加
でも俺はまだ自分でも腑に落ちていないことを素直に打ち明けた。
「これが恋愛感情なのかは正直よく分かりません。短期間のうちの話ですし、飛躍し過ぎているようにも思います」
相手が自分の行く末を握る教授であることは分かりつつも、ここまで話しておいて中途半端では終わらせられなかった。
「先生は、学生なんて俺たちの思うようにならないとも言ってましたし」
俺がマンションで砂崎を抱きしめた時、その瞬間、無性に彼女のことを愛おしく感じたのは事実だが、自分の恋人にしたいと願っていたわけではなかった。
豊橋先生は深くため息をついた。顎のあたりを数度触り、黙って考えている。
「俺自身、余計なことをしてしまったと思っています。講師と学生でいられなくなる可能性を微塵も考えてなかったんで」
「で、お前はどうしたいと思ってる?」
結論を求められていると思った。
「もし叶うなら、もう少し彼女に向き合ってみたいとは思います。彼女を傷つけないためにも」
俺が最終的に学生に振り回されて辟易することになったとしても、それは自業自得の世界だと思える。
最初のコメントを投稿しよう!