赴任

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 授業中の講義棟の外はすごく静かだった。遅刻してきた学生が講義棟まで駆け上がっていく以外、人はいなかった。  俺はふとさっきの焼き芋2人組を思い出した。 「まだやってんのかな」  気になって、講義棟の裏へ回ってみることにした。  吹き抜ける冷たい風が妙に痛く、空気はひどく乾燥していた。確かにこれなら、よく焼き芋が焼けそうな気もする。  棟の裏手にたどり着いた時、焼き芋2人組はもういなかった。その代わりに、まだぶすぶす燃え切れていない枯葉が残されていた。 「ったく、危ねえなあ」  俺は、足で燃えカスを踏んで、火種を消した。  そういやあいつら授業なかったのか?  ともかく、俺の中では、到底まともな奴らじゃないという認識に収まる。でも、俺も大学の頃は似たようなことやっていたような気がする。そう思えば、なんか可愛い気がしてきて、懐かしい気持ちにもなる。  講義棟にもたれて煙草に火をつけて、空を見上げる。寒い時期に、授業にも行かず外で煙草を吸ってた頃もあった。今じゃスーツなんて着て大人になったつもりだが、昨日のことのように思い出せる。  缶コーヒー買ってきたりして、だらだら過ごしたな。  そんなことを考えていると、人が近づいてくる足音が聞こえた。 「禁煙ですよ、ここ」  さっきの焼き芋(無表情の方)だ。
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