出会いは路地裏

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不意に聞こえた声はあの美人さんのもの。 でも声がした先にいたのは一人の男の子。 赤に近い黒の髪はウェーブなんてかかってないし、ましてや腰まで伸びてはいない。 真っ直ぐで肩に付かないほど短い。 ゴスロリもどこかへ消えて半袖のパーカーになっているし。 目は、無表情に近いのはそのままなのに睫毛の量が減ったように見える。 もしかして付け睫毛してたのかな? 「(凄い美形なのには変わりないけど…)」 存在感とか、やっぱり常人以上だと思う。 「お友達?」 「そう、友達」 復唱して尋ねる絵梨佳ちゃんはすごく可愛らしい。 私もこんな妹が欲しかった。 「……お姉ちゃん」 「?何かな?」 「カナタお兄ちゃんと友達なら、エリとも友達になってくれる…?」 こてんっと傾げながら尋ねる絵梨佳ちゃんは本当に可愛い。 寧ろこっちからお願いしたいくらいです。 「私で良かったら、友達になってくれるかな?」 「うん!!」 キラキラと輝く目が私を見つめる。 本当に嬉しがってくれているのが伝わって私まで嬉しくなった。 すると絵梨佳ちゃんは私の手を引っ張ってきた。 「じゃあ遊ぼう!?」 「え、あ……と…?」 遊びたいけれど本当なら私はすぐに帰るべき存在だ。 どうしようかと悩んでちらりと美人さん――カナタさんを見る。 するとカナタさんは「んー…」と考えるような声を出した。 けれどそれも一瞬ですぐに無表情に戻った。 「良かったら遊んでやって下さい。父さんが起きるまでの間はオレも送っていけないし」 「家に絵梨佳だけになるんで」とあっさり許可が出た。 すると絵梨佳ちゃんはもっとはしゃぎ始めてそのまま二階に連れて行かれた。 正直知り合ったばかりの人の家をこんなに歩き回るのは気が引ける。 でも許可もおりたことだし、今は絵梨佳ちゃんと遊ぶことだけ考えることにした。
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