出会いは路地裏

11/12
前へ
/15ページ
次へ
「………歩くの速かったですか?」 「ぃ、いいえ!!そんなことはないです…!!」 「ただ隣を歩きづらいだけです」とは流石に言えなかった。 美形だとは思っていたけれどやっぱり人の目があるところだとなお目立つその美しさ。 周りの人達の殆どはカナタさんの話しかしていない。 そんなカナタさんの隣を私なんかが歩くなんて恐れ多くて出来なかった。 「…………」 「…………」 「……何で逃げるんですか」 「は、反射的に?」 笑って誤魔化そうとするとカナタさんの表情が少し曇った。 うん、納得してない顔って感じがする。 「……オレ、アナタの家知らないのに何で前歩いてんですか?」 「そぅ、なんですけど…」 「…………」 「……はい、今行きます」 「そうして下さい」 家に着くまで、それまで我慢だ。 周りの囁き全部流して進むしかない。 うん、覚悟できた。 歩くペースを上げてカナタさんの隣に並ぶ。 うー、何かブーイング的なものが聞こえてくる気がする。 「――…ウザいですよね」 「(え…?)」 顔を上げると眉間に皺を少し寄せて後ろを見ているカナタさんがいた。 聞き間違いじゃない。 今確かに『ウザい』って言ったのはカナタさんだ。 それも周りの人達に向かって。 「……行きましょうか?」 「は、はい…!!」 こっちを向いたときにはカナタさんは淡々とした表情に戻っていた。 そして私の手を掴んで歩き出す。 ………え? 「あの、手…」 「後ろに行ってしまわないように――まあ、手錠みたいなもんです」 動揺する私にあくまで淡々と言うカナタさん。 ………こんなにドキドキする手錠ってあるんですね。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加