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手を繋いで五分後。
緑色の屋根――私の家が見えてきた。
カナタさんを見ると周りをきょろきょろと見渡している。
もしかしたらこっち側に来たことがないのかもしれない。
「あの、此処で……」
「……あ、はい。大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございました」
これ以上は流石に……カナタさん帰れなくなるかもだし。
それに友達とか親に見られたら確実に質問責めにあう。
一番厄介なのはお母さん。
ご飯中にまで質問してきそう。
「あ、名前聞いても良いですか?」
「藤田悠里です。えっと、五十嵐哉汰(イガラシ カナタ)さんで合ってますよね…?」
「合ってますけど……俺、名乗りましたっけ?」
「家を出るときに表札見まして、名前は絵梨佳ちゃんが」
「なるほど…」と納得する哉汰さん。
そうだよね、普通名乗ってないのに相手が名前知ってたら吃驚しますよね。
私だったらきっと取り乱してると思う。
哉汰さんは大人だなぁ。
身長は私より10㎝位高いし、落ち着いているし強いし。
確実に私よりは年上だと思う。
同い年や後輩でこんなに落ち着いている子見たことないし。
「それじゃあ、また」
「?はい、さようなら」
『また』?
今度があるってこと?
………。
「(うん、そうだったらいいなぁ…)」
また会えたら、そう思うと不思議と口端が上がった。
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