出会いは路地裏

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一瞬の出来事だった。 私達の目の前にとてつもない存在感を持った人が現れた。 不自然に下からの風を受けたスカートと髪。 振り返った瞬間、私は息をのんだ。 「(び、美人さん…!!)」 赤に近い黒のウェーブがかったロングヘアー。 膝までの丈のゴスロリの服。 しましまのニーハイにブーツ、全てが違和感なく着こなされている。 あまりの衝撃にその場にいる全員で固まっていると、その人が徐に私の腕を掴んだ。 そのまま一気に引っ張られて路地裏から出ようとする。 「……あ、あの…?」 無言のまま引っ張る美人さんに声をかけるけれどやっぱり無言だった。 こっち、全然向かない。 「―――…ま、待ちやがれ!!」 少しして男子生徒達が騒ぎ出す。 ……確かにあんな風に急に現れたら誰だって驚きすぎて動けなくなると思う。 すると美人さんが足を止めた。 「………何?」 振り返ってたった一言。 淡々とした雰囲気は変わらないのに少し不機嫌な声色だった。 ……いや、確かにこんな厄介なことに巻き込んだ私が言えた義理じゃないんだけど。 「へへっ、丁度良いぜ!!お前も俺達と一緒に来いよっ!!」 「生意気な女共め!!」 「ちょっと痛めつける必要があるみたいだな…」 彼らの目が一段と恐くなる。 思わず開いている方の手でスクールバックを抱えてしまうほど危険な空気が流れていた。 すると美人さんは私の腕を離して私を守るように一歩男子生徒達の方へ踏み出した。 「(元は私のせいなのに…)」 アナタが私を守る必要なんてないのに。 むしろ私なんか無視して逃げて…!! 声にならない言葉の代わりに私は美人さんの服の袖を掴んだ。 「?」 「……に、逃げて下さい…!!」 助けられたときすごく安心した。 もう大丈夫だって、勝手に思い込んで。 でも本当は関係ない人を巻き込んで益々状況を悪化させていただけだった。 「巻き込んで、ごめんなさ…い…!!」 怖いけれど、この人を巻き込んじゃいけない。 私一人で何とかしなくちゃ、駄目。 そう思っているのに袖を掴んでいる手が離せない。 離さなきゃ、いけないのに。
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