出会いは路地裏

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離さなきゃ、この人をこれ以上巻き込んじゃいけない。 分かっているのに手が離せなかった。 「ご、ごめんなさい……!!」 「………」 テンパり始めているとそっと手を重ねられた。 その人の手はとても暖かくて、自然と私の手からいらない力が抜けていった。 顔を上げると同時に目が合う。 何の感情も見えない無表情。 なのに私の焦りや不安はすっと消えていく感じがした。 「――…此処にいて」 一言、言い終わるか終わらないかのギリギリの早さで前へ一歩踏み出す。 そのまま美人さんは男子生徒達のところへ淡々と歩き出した。 さっきまで袖を掴んでいた私の手はあっさりと離れた。 「何だよ、お前が相手になってくれるのかよ?」 「止めとけ止めとけ!!すぐに後悔すんぜ?」 美人さんのことを鼻で笑いながら男子生徒達は口々に言った。 どうか大きな怪我だけはしないで…。 いても足手まといになることが目に見えていた私は無責任にも祈ることしかできなかった。 「―――…誰がお前らみたいなモブキャラ以下にやられるかっつーの…」 まさか美人さんがそんなことを呟いていたなんて、私は知る由もなかった。 ――――――― ―――― ―― 決着はすぐについた。 というか、美人さんの圧勝過ぎて凄く吃驚してしまった。 鳩尾へ、顔面へ、顎へ。 全ての攻撃がまるで吸い込まれるように決まっていって。 気付けば美人さんの周りには倒れた男子生徒達が気絶していました。 「(つ、強すぎませんか…!?)」 さっきまで恐怖を抱いていた男子生徒達に今じゃ同情すら感じてしまうほど強すぎる。 すると戦いが終わった美人さんは髪を元に戻しながら私の方を振り返った。 一応三対一の不利な戦いだったはずなのに全く無傷の美人さん。 ある意味惚れ惚れします。 「……怪我してない?」 「あ、はい…!!完全無傷です!!」 思わず右腕をぐっとすると美人さんが少し笑った。 ……凄く絵になります。 「あの、本当にありが…」 「――…あ、見つけた!!お兄ちゃーんっ!!」 お礼を言い切る前に空から聞こえた子供の声に、私は思わず顔を上げた。
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