23人が本棚に入れています
本棚に追加
電車を降り、大きなデパートやビルが並ぶ街を歩く。
あと10分ほど歩けば家に着く。
季節は秋。少し肌寒い街中を私は早歩きで歩く。
何故か速く家に帰りたかった。
誰かに追われている気がするのだ。
「にゃー………。」
いきなり私が通りぬけようとした公園から猫の鳴き声がした。
かなり弱っているようなか細い鳴き声だった。
私は気になって公園に入った。
「…………猫。どこだろ…………………」
サクサクサクッ………。
私は落ち葉を踏みながら猫を探す。
しばらく歩くと、落ち葉の上にうずくまっている一匹の紫色の猫を見つけた。
サクサクサクサク……。
私はその猫に近寄って行って、猫の元へつくとしゃがんだ。
変な色の猫………
と思いながら今日お昼に食べきれなかったパンがあることを思い出し、バックをあさった。
「にゃー……。にゃー……。」
猫は、まるで私に助けを求めているかの様に私をジッと見つめて鳴く。
「ちょっとまって…。パンあげるから………。」
私はパンを取り出し、小さくちぎっておかしな色の猫の口元にそれをもっていった。
すると猫は口をひらきパンを口にする。
パンはすぐに無くなり「にゃー!にゃー!」ともっとくれ。と言っているように猫は鳴いた。
私は残っていたパンを全て小さくちぎり、パンが入っていた袋の上においてあげた。
パクッ…。パクパクパクパクッ…………。
パンはすぐに全てなくなった。
パンを食べ終えた猫は、ゆらりと体を起こし私にすりよった。
ちりーん…………。
その時、電車に乗る時に聞いた鈴の音が再び聴こえた。
「?鈴してる……………………?」
私は猫を見た。
けれど鈴はどこにもついていなかった。
「私の空耳か……………………」
さぁ、そろそろ帰ろう。
そう思い立ち上がった時。
ぶちっ!
猫が私のバックについていた、水色の鍵の形をしたキーホルダーを口で引きちぎって、くわえて走って行ってしまった。
「………まぁいいか…。もういらないし。」
私はバックを持ち上げ公園をあとにした。
最初のコメントを投稿しよう!