序章 特待生と仮面

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脳裏に浮かび上がる一つの仮説。 桜花魔術学園には様々な噂がある。異例の推薦入学を果たした人がいるだとか、魔術師検定三級の資格さえ取得していない人がいる……等など。 その中で僕が思い至ったのは。 「……特待生……」 学年問わず学園トップクラスの実力を誇り、特別に授業等が免除された生徒。そんな奴が一年生に“複数人”いるらしい。 あくまで噂な上、彼らがその特待生とは限らないが、僕はそれ以外に検討はつかなかった。 「さて」 僕の呟きが聞こえていないのか、または敢えて無視しているのかは分からないが、目の前の狐面が言葉を紡ぐ。 「答えろ、井原遊馬(いはらゆうま)。あの事件の時、あんたが使った仮面はどこにやった?」 「……知らないな。勝手に消えていた」 普通なら不信感を買ってもおかしくない答え方だったのかもしれない。だが狐面は「そうか」と短く呟いたきり、何も追及するようなことはしなかった。 「では、あの仮面は誰から買った?」 「買ってない。フードコートと変声魔術を使った妙な奴に渡された。だから名前は愚か、顔すら見ていない」 チッ、と舌打ちが後方から聞こえる。
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