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エントランスに入った私は、化粧室に立ち寄ってからエレベータに乗った。
雨降りのせいか、スーツが濡れた時独特の嫌な臭いに、一瞬息を止める。
これだから雨の日は嫌だ。
服は湿気るし臭いし、ストッキングは汚れるし、靴も手入れが面倒だし。
四階を過ぎた辺りで止めていた息が苦しくなり、私は静かにそれを吐き出す。
――ポーン。
肺の中の最後の一吐きまで出しきった時、丁度扉が開いた。
数人の同僚と一緒にホールに出た私は深呼吸。
ふう。
オフィススペースに入った私は、いつも通りタイムカードを機械に通してから自分の席へ。
鞄を置くのと同時にチラと不在状態の隣の席を一瞥。
やっぱりまだ来てないんだ。
何となく変な感じはしたけれど、既にパソコンを起動させていた浦野さんに挨拶をして席に座った。
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