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「追うな、山まで退かせるな」
飛耀は追撃をさせずに一度隊列を組ませる。
追撃が無いとわかり、敵が態勢を整える。
「大将、完全にたち直されるとこちらがやばいですぜ」
「わかっている。だが、たち直さなければ完全に崩れる」
飛耀は前衛の守りが固まるのを待っていた。
「行くぞ、当たっては引くを繰り返して時間を稼ぐのだ」
飛耀は剣を振り下ろし、馬を駆けさせた。
立ち直りつつある敵の守りは硬くなっていたが、まともにぶつかってはいない。
こちらの損害は低いはずだった。
三度攻めると飛耀は攻撃の手を止めた。
馬の息が上がりかけていたからだった。
これからどうするか考え始めた飛耀の視界に山の中腹から煙が上がり始めるのが見えた。
別行動を取った盛明が拠点に火をかけたのだ。
「来たか」
「大将、どうするんで?」
「決まっているだろう。ここで決めるぞ」
泰一が戟を振り上げ雄叫びを上げた。
兵たちも士気を上げ始める。
敵は動揺しているようだ。
飛耀も大きく息をして叫んだ。
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