黄巾の乱

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肉がいい匂いを立てている。余分な脂はだいぶ焼け落ちたようだ。焼いている面を返し岩塩を振る。味付けはこれだけである。 「そろそろだな」 肉を火から外そうとしたところで声をかけられた。 「ここで何をしている?」 肉へ伸ばした手を止め男が振り返る。 木の棒を手にした男が二人立っていた。坊主頭と小柄な体の二人だった。 棒は槍のつもりなのだろう。先端を削って尖らせてあった。 精悍な顔つきだったがどこかあどけなさが残る男は溜め息をつきながら答える。 「何をしているかだと?見てわからないか?」 「わからんから聞いている」 小柄な男が棒を構える 「肉を焼いている」 「そんなことは聞いていない。お前は何者かと聞いているんだ」 小柄な男が棒の先をこちらに向けながら叫ぶ。 「おいおい、危ないから先を向けるなよ」 「だ、黙れ!」 馬鹿にされたと思ったのだろう。さらに先端を突き出してくる。 「何もしないから先を向けるなって、それよりも肉が焦げちまう」 「ふざけるな!」 「やめろ陳、お前は落ち着きがなさすぎる」 「だけど孝の兄貴」 坊主頭の男に止められ小柄な男は不服そうだ。 「俺たちはお前が何者で何の目的があるか知りたいだけだ」」 「脅かさないでくれよ。俺は山で迷ってここで野宿しようとしてるだけだ」 棒が下ろされたのを見てから肉を火から取り出す。少し焦げていたが旨そうだ。 「あんたらも食うか?そこで捕まえた兎の肉だが」 男は肉にかぶりつきながら言った。 「いや、遠慮しておく。俺たちの村もそう遠くない」 「そうか」 「お前、黄巾じゃないのか?」 陳が聞いてくる。 「あんなのと一緒にしないでくれ、俺は洛陽へ義勇兵として参加しに行く途中だ。三日もあれば着くだろう」 「義勇兵?洛陽だと?」 孝が驚いた顔をしている。陳は呆気に取られた顔だ。 「どうかしたのか?」 「ここは琢県だ。洛陽まではここから二十日以上かかる」 「えっ?」 男は肉を取り落とした。
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