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「お前そんな事も知らずに義勇兵になりに行くつもりだったのか」
孝が呆れた声で男に問いかける。
「ここは信都じゃないのか?」
「信都は南の方角だな。お前は何処から来たのだ?」
「南皮からだ」
「見当違いの方角だな」
「では義勇兵の募集に間に合わないと?」
「どのみち信都からでも難しかったとは思うが・・・」
「なんてこった・・・」
孝は落胆しながら落とした肉を拾い上げ枝葉や砂利を取り除いている男を見回した。
若いが力が余っているだけではないだろう。
目に力がある。そう思った。村の連中には無い力だと思った。
「ところで、お前の名は何というのだ」
「俺の名は飛耀という」
「そうか、俺は孝。こいつは陳という」
坊主頭が名乗る。
陳が訝しむように孝を見ている。
「飛耀、俺たちの村に来ないか?」
「お前の村にだと」
飛耀がかじりついていた肉から顔を上げる。
「義勇兵になろうとしてたんだ。腕は立つのだろう?」
「俺を雇うつもりか?」
骨を吐き出しながら飛耀が孝に目を向ける。
「俺たちの村にも黄巾のやつらが略奪に来る。そいつらを追い払うのを手伝ってはくれないか」
「待ってくれ兄貴。兄貴はこんな奴を信用するのか?」
陳が割り込んできた。飛耀を見る目にはあからさまな不信感が滲んでいる。
当たり前だった。雇った兵が略奪することもある。
実際に何回か略奪されてもいるのだ。不信感を抱くのも無理はない。
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